調査概要

城崎温泉調査は、2024年11月に実施された現況調査として、温泉街および宿泊施設周辺の来街者動向と歩行者行動、さらには自動車の通行・停車状況を定量的に評価することを目的としています。チェックイン・チェックアウト調査、LiDAR計測、ビデオ撮影の各手法を組み合わせることで、温泉街の利用実態と課題を明らかにしました。

調査手法

当研究では、以下の複合的な調査手法を採用しています:

  1. チェックイン・チェックアウト調査
    • 宿泊施設34箇所で、到着・出発時刻、人数、荷物量、交通手段を記録し、来街者の規模と動向を把握。
  2. LiDAR計測
    • 御所の湯前、一の湯前、北柳通りの3箇所に設置し、歩行者の位置、移動速度、ルート、滞留行動を高精度に記録。
    • 個人情報に配慮しながら、連続的なデータ取得により細かな行動パターンを明らかに。
  3. ビデオ撮影調査
    • 温泉街内10箇所で歩行者と自動車の通行・停車状況を記録し、現状の交通動態を視覚的に捉える。

主な発見

来街者の動向と歩行者行動

  • チェックイン・チェックアウト調査 宿泊施設での調査から、来街者のピーク時間やグループ構成、利用交通手段の傾向が明らかになり、送迎体制や施設運営規模の検討に寄与するデータが得られました。

  • 歩行者行動の解析(LiDAR調査) 温泉施設前での歩行者の移動経路や滞留時間が詳細に記録され、特に温泉街内の特定エリアで、歩行者の滞留行動が顕著であることが確認されました。

  • 交通動態の可視化(ビデオ調査) 温泉街内の自動車通行と駐停車状況を把握することで、歩行者天国の実施が交通環境に与える影響や、歩行者と自動車の相互作用が浮かび上がりました。

利用者属性と行動パターン

  • アンケート調査の結果、温泉街利用者は、宿泊施設利用者を中心に、ファミリー層や団体客が多い傾向があり、特にチェックイン時の荷物量や交通手段の違いが、利用者動線に影響していることが示されました。
  • 歩行者の移動ルートから、温泉施設前の特定エリアでの滞留が、景観や施設への関心に起因していることが明らかになりました。

提案と今後の展望

本調査の知見に基づき、以下の改善策を提案します:

  1. 温泉街全体の動線改善
    • 宿泊施設から温泉施設、商店街への移動経路の最適化を図り、チェックイン・チェックアウト時の混雑緩和と安全性向上を目指す。
  2. 滞留エリアの環境整備
    • LiDAR計測結果に基づき、特に滞留行動が顕著なエリアにおいて、休憩設備(ベンチ、シェード、可動ファニチャー)の最適配置を検討し、来街者が快適に利用できる空間を創出する。
  3. 交通動態と歩行環境の統合的評価
    • ビデオ撮影データから得られた交通状況と歩行者行動を連携させ、温泉街全体の安全性向上と車両との共存を図るための具体的な対策を提案。

本調査は、温泉街の魅力向上と安全性確保のための基礎的なデータを提供するとともに、今後の温泉街再整備プロジェクトへの具体的な提案の基盤となるものです。今後は、調査結果を踏まえた実証実験の実施や、他地域との比較検討を進め、より普遍的な都市計画手法の確立を目指します。