調査概要

東京高速道路(通称KK線)は、首都高速道路の一部として1960年代に建設された高架道路ですが、近年は歩行者専用空間として注目を集めています。本研究では、銀座スカイウォークイベントを契機に、橋梁部や滞留空間(エシカルゾーン)における歩行者の行動特性を多角的手法で解析しました。

調査手法

当研究では、以下の手法を組み合わせた複合的なアプローチを採用しています:

  1. LiDARセンサーによる歩行者行動計測
    • 歩行者の動線と滞留行動を高精度に記録
    • 通行量の時間帯別変動を定量的に把握
  2. 現地観察調査
    • 滞留行動とアクティビティの質的把握
    • 写真記録による空間利用の可視化
  3. SNS投稿分析
    • イベント時の利用者体験の把握
    • ハッシュタグ分析による認知度と関心度の測定

主な発見

歩行者動線の特徴

  • エシカルゾーン(滞留空間)では、平均滞在時間が約8分間と比較的長く、写真撮影や景観鑑賞といった活動が顕著でした。
  • 橋梁部分では、主に通過利用が中心となり、平均歩行速度は約0.8m/秒と、一般的な歩行速度よりもやや遅い傾向にありました。
  • 日中(12:00-16:00)の利用者が最も多く、この時間帯の総歩行者数は他の時間帯と比較して約2倍多いことが確認されました。

利用者属性と行動傾向

観察とSNS分析から、以下の特徴が明らかになりました:

  • 若年層(20-30代)と思われる利用者が約70%を占め、その多くがグループでの訪問
  • 写真撮影スポットでの滞留が多く見られ、特に景観の良い箇所での集中が顕著
  • SNS投稿では「レトロ」「歴史」「眺望」といったキーワードが頻出

空間デザインの評価

LiDAR計測と現地調査から判明した空間利用に関する課題:

  • 橋梁部とエシカルゾーンの連続性が不足しており、歩行者の流れに断絶が生じている
  • 休憩設備(ベンチなど)の配置と利用実態にミスマッチが見られた
  • 遮熱・日除け設備の不足により、夏季の利用率が低下する傾向

提案と今後の展望

本調査の知見に基づき、以下の改善策を提案します:

  1. 利用者動線に基づいた休憩スペースの再配置
    • 実際の滞留行動データに基づく最適配置
    • 季節変動を考慮した可動式ファニチャーの導入
  2. 橋梁部とエシカルゾーンの空間的連続性の強化
    • 視覚的ガイダンスの設置
    • 舗装デザインによる動線誘導
  3. イベント活用を通じた認知度向上
    • 定期的な小規模イベントの実施
    • 歴史的価値の可視化と情報提供

この研究を通じて、都心部における貴重な歩行空間であるKK線の潜在的価値を最大化し、より多くの市民が快適に利用できる空間へと発展させるための基礎的知見を得ることができました。今後は、実証実験を通じた提案の検証と、他の類似空間への応用可能性の検討を進めていく予定です。