調査概要

柏駅前ハウディモールは、千葉県柏市に位置する歩車分離道路上の商店街エリアで、JR柏駅東口から約100mに広がる旧水戸街道沿いの商店街です。本調査は、歩行者天国の実施による歩行者利用の変動や、車道空間の新たな歩行利用の傾向、さらに利用者属性との関連性を定量的に評価することを目的として実施されました。

調査手法

当研究では、以下の複合的な手法を採用しています:

  1. ポイント型流動人口データ
    • スマートフォンGPSから取得した位置情報を基に、歩行者の移動経路と通行量を推定。
    • 歩行者天国実施時と通常時の全体歩行者数の比較を行い、エリア全体の歩行利用の増減を評価。
  2. ビデオ撮影調査
    • 柏駅東口のペデストリアンデッキ上から、ハウディモールの全断面を俯瞰撮影し、歩行者の通行量や方向、断面交通量を集計。
  3. LiDAR計測
    • LiDARセンサーを用いて、歩行者の位置、速度、進行方向などを高精度に連続計測。
    • 車道、歩道(北・南)ごとの歩行者動態を定量的に把握し、時刻ごとの変動を詳細に解析。
  4. 歩行者アンケート
    • 現地で実施したアンケートにより、利用者の属性、来街頻度、交通手段、歩行場所の選択理由など、定性的なデータも収集。

主な発見

歩行者数の増加と利用パターン

  • 歩行者天国実施時の増加 ポイント型流動人口データによると、歩行者天国実施時は通常時に比べ総歩行者数が約1.2倍に増加しており、エリア全体の歩行利用が活性化されました。

  • 車道空間の新たな利用 LiDAR計測とビデオ撮影の結果、歩道だけでなく車道空間でも歩行者が積極的に利用されていることが明らかになりました。増加分の約5分の1が車道上での歩行利用として確認され、店舗やエスカレータなど周辺施設との連動が示唆されました。

利用者属性との関連性

  • アンケート調査の結果、柏駅周辺在住者やグループで来街する利用者が、特に車道空間を利用する傾向にあることが判明しました。
  • 利用者の来街頻度や交通手段の違いが、歩行経路の選択や利用空間の傾向に影響を及ぼしていることが示され、地域の歩行環境改善に向けた具体的な施策の検討につながりました。

提案と今後の展望

本調査の知見に基づき、以下の改善策および今後の展望を提案します:

  1. 歩行者天国の効果の最大化
    • 実施時の歩行者数増加をさらに促進するため、エリア内の車道空間利用を最適化し、通行動線の明確化や視覚的誘導を強化する。
  2. 利用者属性に基づく空間デザイン
    • 柏駅周辺在住者やグループ来街者の特性に合わせ、車道空間の歩行利用を安全かつ快適にするための設備配置(例えば、移動しやすい案内表示や休憩スペースの再配置)を検討する。
  3. 多角的データ統合による動態把握
    • ポイント型流動人口データ、ビデオ、LiDAR、アンケート調査の結果をさらに統合し、エリア全体の歩行者動態をリアルタイムに把握する仕組みの構築を目指す。

本調査を通じて、歩行者天国実施時における新たな歩行利用パターンと利用者属性の関連性が明らかとなり、柏駅前ハウディモールの歩行環境改善に向けた具体的な提案の基盤が形成されました。今後は、これらの知見を基に、さらなる実証実験と他地域との比較検討を進め、より普遍的な都市計画手法の確立を目指します。